旅する日本語展2019
旅する日本語展2019

連動インタビュー企画

わたしの旅する日本語

「四季折々で異なる表情を見せる京都の日本庭園」です。

株式会社竹中工務店 開発事業本部長
橘 明宏

2019年12月25日

東京タワー、数々のドーム球場、あべのハルカスなど数多くのランドマークの建設を請け負ってきた「竹中工務店」。一般的にはゼネコンとして知られている竹中工務店だが、自ら土地建物を取得するなどの不動産開発事業にも力を入れている。開発事業本部長 橘明宏(たちばな・あきひろ)さんは「その場所で、今後何世代にもわたって、その土地と関わっていけるか」ということを自問しながら不動産開発に当たっている。橘さんにとって風景とは情熱を注いできた仕事そのものでもある。18年間、海外で開発事業を手掛け、日本に戻ってきたのは3年前。心底感じるのは日本の四季の豊かさだ。

旅のエピソードを語る橘さん

「日本でなかなか旅が出来ていないというのが、実は正直なところなんです。」橘さんは始めにそうはにかんだ。入社後 10年目の1998年にハワイ・カウアイ島に赴任。自社で開発した大型リゾートホテルの運営に4年間携わり、その後はニューヨークで自社の海外不動産事業全般に関わってきた。3年前日本に戻ってきた理由の一つは、京都の東山に2019年秋にオープンした「パーク ハイアット 京都」の開発プロジェクトを推進するためだ。

創業140年の老舗料亭「山荘 京大和」の建物と庭園を残しつつ、その庭園の一角にホテルを建設するというもので、清水寺へと続く二寧坂に隣接している地区でのホテル建設にあたっては町並みへの配慮などいくつもクリアしなければならない課題があった。プロジェクトは足掛け5年。最初の2年間はニューヨークから月に1度、京都に通った。その時、心奪われたのは自分がプロジェクトで関わっていくことになる日本庭園の景色だった。

「日本庭園って、すごく計算されて作られているんですね。春は桜、夏は苔と木々の緑、秋は紅葉、冬は雪景色。四季折々で本当に違う表情を見せる。どの季節も非常に趣があります。中でも色鮮やかな秋の紅葉と冬の雪景色は格別でした。日本庭園に詳しいわけではなかったので、見ただけではわからなかったんですけれども、京大和さんや当社の設計チームから、なぜそういう配置で作庭されているのか教えてもらったりして、そうするとまた、見える景色が違ってくる。日本庭園はその場を訪れる大きな楽しみとなっていました。」

ホテルを開発する仕事の中で橘さんたちのチームが大切にしていることがある。それは「このホテルに泊まって良かった」と思ってもらうことと同じくらい、「この土地に来て良かった」と思ってもらうこと。「京都であれば、いらっしゃった方には、京都でしか味わえない京都ならではのものに出会って帰ってほしいと思っています。日本庭園の色もそうですし、京都ならではの味もそうですし、お茶室で味わえる文化もそうです。『このホテル良かったね』と言っていただけるのはもちろん嬉しいけれども、『ここに来て良かったね』と言ってもらえたら、我々はもっとハッピーです。」

橘さんにとって子供の頃の旅で最も印象に残っているのは北海道だ。出身は関西だが父親の転勤に伴い、福岡、横浜、名古屋、札幌と日本各地で暮らした。「札幌にいた頃に、稚内から知床半島まで旅行に連れて行ってもらったんです。何もない風景というか、原野が延々と広がっている景色を見たとき、なんにもない場所が日本にこんなにあるんだなと衝撃を受けたのをいまだに覚えています。」

今、橘さんが旅してみたい場所は東北だ。「東北ってまだあまり行けていないんです。海のある風景が好きで、東北の海って、独特の顔があるんだろうなって思っているんですけれど、実際に見てみないとなかなか本当のところはわからない。知らない世界を見てみたいというんですかね。旅ってやっぱりそれが一番の面白みですよね。」

子供たちは今もアメリカでそれぞれの暮らしをしているという。「この前、家族でハワイを旅しました。子供たちはアメリカから、私たちは日本から出発してハワイで合流したんです。ハワイは子供たちが小さい頃一家で暮らした場所なので、昔を懐かしんでの旅でした。今の私にとって家族との旅は『絆』を再確認するというとちょっと大げさですけれども、そういう意味もあるのかなと思っています。普段なかなか話せていないことを話したり、そんな大事な時間になっています。」
日本に帰ってきて3年。今も札幌と福岡のプロジェクトを抱え日本国内を飛び回る。そんな中で橘さんが大切にするのは家族と旅をする時間だ。

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