旅する日本語展2017

コラム10

富士フイルムイメージングシステムズ株式会社

富士フイルムイメージングシステムズ株式会社 代表取締役社長

西村亨(にしむら とおる)さん

2018.3.1

富士フイルムイメージングシステムズ株式会社

私にとって旅とは、「自分の
知らない世界を知ること」です

旅の想い出を永遠に切り取り記憶できる写真。カメラがとらえた一瞬はその時の風と匂い、感情を蘇らせる。富士フイルムイメージングシステムズ株式会社代表取締役社長・西村亨さんは旅先で撮った夕日を見ながら「写真には魔法のような力があります」と語る。大切な人の笑顔、二人で感じた風、一歩を踏み出したときの空の色。写真がもたらす力は人生という旅を生き抜く力となる。

 写真には、時の経過を経ても色褪せない一枚というものがある。旅の想い出を切り取った何気ない写真が、後年眺め返した際に、あの日あの瞬間の香りまで伴いながら心のなかに想い出の輪郭を描き出していく。想い出をカタチに残せる写真はスマホ内のデータへと変わった現在においてもその力は大きい。
 西村亨さんが代表取締役を務める富士フイルムイメージングシステムズ株式会社では、サインやディスプレイ、クラウド画像情報データサービスなどの法人向けサービスの他、写真プリント、カメラ製品、印画紙などの販売・サービスも行っている。「アナログとレトロな感じが魅力」と、人気が再発したインスタントカメラの「チェキ」も、富士フイルムの製品だ。

ハワイでの思い出の写真を指差す西村さん
ハワイでの思い出の写真を指差す西村さん

 西村さんが入社した当時は、写真はカメラで撮影し、フィルムを現像したものであった。当時、フィルムといえば富士フイルムであり、空港はもちろん観光地のどんな小さな店にもフィルムコーナーがあり、販売されていた。
「旅行に行くときは、必ずカメラを持って行ったものです。想い出を撮っておきたいという思いがありました」
 しかし、そんなアナログの時代は過ぎ、カメラはスマホに装着され、写真は印刷せずにデータで保管する時代へと変わった。写真は「想い出」ではなく、「メモ」へと変容したのだ。
 「でも、とっておきの想い出は、カタチに残しておくべきだと我々は考えています」
 西村さんが強く語る理由は、2011年3月11日、東北を津波が襲った東日本大震災にあるという。
「津波が引いた後の町に、流されずに残ったアルバムや写真があったそうです。これらの写真をきれいにして持ち主に返したいと、ボランティアの方々から弊社に相談があったのです」
 塩水とバクテリアにまみれてしまった家族の写真。それは、家族の歴史と想い出を切り取ったかけがえのない「カタチ」だ。
 何としてもきれいにして家族の元に返したい。そう考えた西村さんと社員は、全員で写真を復活させる「写真復活プロジェクト」に加わる。水洗いして干す作業を繰り返し、復活させた写真は数万枚にも及んだ。蘇った写真の一枚一枚が大切な人の元へ帰って行くその光景に、同社として改めて写真の意義を感じたそうだ。
「この時、昔の写真は残っていたのですが、2000年以降の写真はほとんどありませんでした。データは戻ってこないけれども、写真ならカタチにして残しておけます。カタチとして残すことの大切さが身に染みました」。
 かけがえのないシーンと想い出を手に取るカタチで残すもの。それが写真なのだ。
 西村さんは、昨年夫婦で旅したハワイ・マウイ島の写真を指さす。
「こうしてみると何の変哲もない景色なのですが、風を感じたときの記憶、すがすがしさ、さわやかさを残したいと思ってシャッターを切っています。写真を見たときに、そのときの記憶が蘇るのです」
 脳裏に蘇るそのときの空や夕焼けの色を、西村さんは「記憶色」と呼ぶ。記憶色が目の前に広がる、そんな高品質な写真を届けるのが、自分たちの使命であると語る。
 そんな西村さんにとって旅とは「自分の知らない世界を知ること」。年に1回夫婦で出かける旅では、現実社会でのストレスを忘れ、ゆっくりとした時間を過ごす。
「せかせかしないで、ぼーっとしていることが多いですね」
 知らない土地の文化や風景、流れる空気と時間。アクシデントも人生の幅となり、想い出のスパイスとするのが、西村さんの旅だ。
 そんな旅がスタートする空港は高揚感が一気に高まる場所だという。キャビンアテンダント達の動きや、搭乗案内のアナウンス。
「ワクワクしている、たまらなく良い空気感だと感じています」
 旅は出発する前から始まっているのだ。
 写真はスマホで撮ってデータで保存するという時代。それでも、あえてプリントするならどんなシーンかという質問に、「旅行」という答えが圧倒的に多かったという。家族や恋人、ひとりでの旅は、人生や歴史の1シーン。想い出を手元に残したいという想いがあるのかもしれない。そんな旅の想い出を冊子のカタチにすることができるのが、同社のサービス「フォトブック」だ。フォトブックを開き蘇る感動の記憶は、明日を生きる糧となる。
「旅の想い出をカタチに残し、感動の輪を広げる。我々は、本当に良い仕事をしていると感じています」そう西村さんは胸を張った。

富士フイルムイメージングシステムズ株式会社が選んだ 旅する日本語

見和ぐ。父と旅に行くといつも銭湯に連れて行かれた。その町の日常に触れることが一番贅沢な旅なんだと父はいつも繰り返していた。あれだけ嫌だった銭湯の旅…その魅力がようやく分かる年齢になった。みなぐ……見て心が和やかになる。

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