旅する日本語展2017

コラム06

株式会社竹中工務店

株式会社竹中工務店 東京国際空港第2ターミナル
北側サテライト及びボーディングステーション建設工事 作業所長

茶山勝(ちゃやま まさる)さん

2017.9.1

株式会社竹中工務店

私にとって旅とは、
「一期一会の舞台」です

空の旅を終えて飛行場に降り立つと、その土地独特の匂いが鼻腔をくすぐる。風が運ぶその匂いはこれから始まる旅のドラマを予感させる。いわば空港は物語のプロローグの地。このドラマが始まる舞台づくりに携わって20年、自身も空港を愛してやまないと公言する茶山勝さん(株式会社竹中工務店)にとって旅とは?

 「私と空港工事との最初の〝出会い〟は29歳の頃、シンガポール チャンギ国際空港のターミナル改修工事からはじまりました」

 茶山さんは、その仕事を「出会い」と表現するほど空港が好きな人だ。現在の役職は東京国際空港第2ターミナル北側サテライト及びボーディングステーション建設工事を担う作業所長。1982年の入社から20年以上にわたり空港づくりに携わってきた竹中工務店屈指のスペシャリストだ。

 その空港づくりにかける想いの原点は少年時代に見た航空ショーの感動に基づいている。

「私の田舎は富山県なんです。今でも憶えているのが、お隣石川県の小松空港で開催される航空ショー。青空を切り裂くような轟音とともに駆けていく飛行機がそれはもうカッコよくて。あんな大きなものが飛ぶなんてスゴイという憧れがありました」

 空港の工事なら憧れの飛行機の側で仕事ができる。それだけにシンガポール チャンギ国際空港の改修工事に従事することが決まったときは嬉しかったという。しかし、実際に仕事が始まってみるとワクワクとは裏腹。空港運営に影響を与えることが絶対に許されない、非常にシビアかつ高度な技術が要求される工事であった。苦労は多かった、と言う。

「ただ空港は、旅人がその土地に降りて最初に触れる場所ですよね。第一印象が人の脳裏に刻まれやすいことを考えると、いわばその国の顔とも言えます。そうした重要な場所づくりに携われているというやりがいをもって、ずっと仕事ができたことは幸せでした」

旅のエピソードを楽しそうに語る茶山さん
旅のエピソードを楽しそうに語る茶山さん

 自身の仕事人生の集大成をこれからの羽田空港での建設工事にぶつけたいと語る茶山さん。日本を訪れる人に、この国の良さを期待してもらえる場所を作りたいとのことだ。

「世界のトレンドも国の玄関口として魅力的な場所づくりが意識されるようになっています。例えば、シンガポール チャンギ国際空港は空港というよりテーマパークともいえます。家族で1日遊べるよう設計されています。また到着ロビーがガラス張りになっていて、待合室で待っている家族や恋人、友人とすぐに目が合う。ウェルカム感があってアットホームです。羽田空港も日本ならではの良さを打ち出そうとしています。その想いをしっかりとかたちにしたい」

 そんな茶山さんには色褪せない想い出となった旅の写真がある。大きなウミガメを囲んで、茶山さん家族と現地のガイドとが並ぶ一枚の写真だ。仕事休みにマレーシアのティオマン島に家族で旅行した時に撮ったもので、観光名物のウミガメを見ようとガイドと共にシュノーケリングに出かけたそうだ。ところが、いくら待てども肝心のウミガメが現れない。それでもガイドは「せっかくマレーシアに来ているんだからどうしてもウミガメを見せたい」と熱心に探し続けてくれたという。

「スポットを何カ所も回っていい加減諦めようとしたとき、ガイドさんが海に潜ってしばらく出てこなくなりまして。心配になり駆け寄ったんです。そうしたら浦島太郎さながら大きなウミガメを連れて顔を出しまして。驚きましたよ。子供達も大はしゃぎで。あそこまで心の籠ったおもてなしを受けたことはなかったので。私は日本を訪れる人にもああいった感動を与えたいんです。旅の魅力って、あのガイドさんのように一期一会だと思うんです。普段の生活では絶対に出会うことがない人と出会える素晴らしさというんでしょうか」

 茶山さんにとって旅の魅力とはその土地で出会った人の思いがけない温かさに触れることができることだという。そういった人の温もりに触れたとき、その旅は忘れられない想い出として輪郭が描かれ始める。その旅の輪郭は時間を経て胸の中でなぞりかえしても、いつまでも色褪せることはない。そうした想い出を日本を訪れる人の心にも描きたい。2020年には世界の目が日本に向き、たくさんの人が海外からやってくる。日本とのファーストコンタクトとなる羽田空港を、その素敵な旅のドラマを予感させる場所にしたいのだという。

「日本に来た人に快適に、心地よく思っていただけるように、空港づくりに携わるみんなの想いをかたちにしたいと思っています」。

一期一会の舞台づくりが、始まっている。

株式会社竹中工務店が選んだ 旅する日本語

道の記。いい万年筆を携えて旅をすると どこに行っても絵葉書を探したくなる。気に入った一枚を買い、その地で思ったことを綴る。宛先は・・・自分自身。それは旅を終えた自分への大きなご褒美となる。みちのき……旅行中のことを記した文。道中記。

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